痛みは手術のときに最も嫌な体験の一つです。痛みがあると精神的につらいだけでなく、血圧や脈拍が不安定になったり、胃腸の働きが悪くなったりという悪影響があることが知られています。最近、手術後の患者さんの合併症を減らして早期に回復させるためにERAS(Enhanced Recovery After Surgery; 術後回復の強化)という取り組みが世界的に行われていますが、その中でも痛みを最小限に抑えることが強く提唱されていて、私たちの病院でも取り組んでいます。
飲み薬や点滴で使う痛み止めにはアセトアミノフェン、消炎鎮痛剤、オピオイド鎮痛剤などがあります。お腹や足の手術では脊髄の近くに細いチューブを入れて局所麻酔薬を入れる方法(硬膜外麻酔法)を行います。使用するお薬や投与する方法によって効果の強さや副作用が異なるので、手術の種類や患者さんの状態によって何種類かの方法を組み合わせて痛み止めを行います。
腹部手術や脊椎手術など痛みが強い手術では、手術後数日間は点滴からオピオイド鎮痛剤を入れますが、当院では特殊なポンプ(写真3)を使って、患者さんが痛いときにボタンを押すことで必要なお薬の量を調整するPCA(patient controlled analgesia; 患者自己調節鎮痛法)という方法も行っています。麻酔科医が定期的に病棟回診を行い、主治医の先生や病棟スタッフとも協力しながら、痛み止めの調節や副作用対策なども積極的に行って効果を上げています。