福岡市立こども病院

麻酔科

当科について

診療内容

病気になる、病院に行く、手術を受ける。ご本人もご家族も、様々な心配や不安をかかえて手術に臨まれることと思います。私たち麻酔科医が患者さんやご家族と目に見える形で接する時間は限られていますが、手術や処置の間はずっと患者さんに寄り添っています。手術中の痛みを取り除くことはもちろん、手術中に起こりうる様々な問題を未然に防ぎ、万が一の時は素早く対処できるように常に備えています。

麻酔科診療内容イメージ

科の特徴・特色

こどもの患者さんは、手術・処置に対する不安や恐怖心が強いため、ほとんどすべての手術を全身麻酔で管理しています。小さなお子さんやご家族と離れる際の不安が強い患者さんには、ぼんやりした状態で手術室に行けるよう、手術室に入る前に鎮静薬を使用します。薬を使わなくても大丈夫なお子さんには、歩いて手術室まで来ていただきます。

全身麻酔の始め方には大きく2通りの方法があります。一つは、患者さんの顔にマスクをあてて麻酔ガス(吸入麻酔薬)を吸ってもらう方法です。ガスを吸って意識がなくなり、痛みを感じなくなってから点滴などの処置を行います。お好みでマスクにフルーツの匂いなどをつけることができます。点滴の針を刺す際の痛みを感じないので、小さなお子さんや注射が苦手な方にお勧めします。ただし、状態によっては全身麻酔の前に点滴を始める必要があるため、すべての患者さんに行えるわけではありません。もう一つの方法は、先に点滴を取り、薬(静脈麻酔薬)を注射して麻酔を開始する方法です。点滴の針を刺す際に痛みがありますが、注射が平気な方や匂いが気になる方にお勧めします。点滴の針を刺す前に皮膚に局所麻酔のクリームを塗ることで注射の痛みを和らげることができます。どちらの方法を選ぶかは、患者さんやご家族のご希望を伺った上で麻酔科医が判断します。

麻酔科の特徴・特色イメージ

全身麻酔によって意識がなくなると、息をする力が弱くなることや、息の通り道が狭くなることがあります。しっかりと息ができるように、全身麻酔中は口の中に人工呼吸用の管を入れることがあります。人工呼吸用の管には、気管まで入れる管(気管チューブ)、気管の入り口の手前まで入れる管(ラリンジアルマスクなどの声門上エアウエイ)、鼻や口の中の息の通りをよくする管(経鼻エアウエイ、経口エアウエイ)など、いくつかの種類があり、患者さんの状態や手術の内容によって使い分けます。手術が終わって自分でしっかり息をする力が戻ると管を抜きます。

手術によっては、全身麻酔に加えて手術部位の痛みを感じなくする部分麻酔(区域麻酔)を併用することがあります。区域麻酔の一種である硬膜外麻酔は、背中から痛み止めの薬(局所麻酔薬)を注射する方法で、主に腹部や下半身の手術に用います。全身麻酔をした上で、背中から硬膜外腔という部位に痛みがわからなくなる薬(局所麻酔薬)を注射します。短い手術では1回だけの注射で終わります。長い手術ではカテーテルという細い管を入れておいて薬を繰り返して注入できるようにします。手術の後もこの管を残しておいて、痛みの治療に使うこともあります(硬膜外鎮痛)。その他、手術部位に応じて神経ブロックと呼ばれる区域麻酔を行うこともあります。

手術の内容や病気の状態によっては、硬膜外麻酔や神経ブロックなどの部分麻酔ができないことがあります。このような場合は、吸入麻酔や静脈麻酔が中心になります。その他、手術中の出血量を減らして輸血をできるだけ避けるために、血圧を正常よりも低い状態で管理することもあります(低血圧麻酔)。

全身麻酔は呼吸に影響を及ぼすほか、脈拍や血圧も変動することがあるため、麻酔科医は手術による痛みを制御すると同時に、すべての手術で経皮酸素飽和度測定(パルスオキシメータ)、呼気二酸化炭素測定(カプノメータ)、心電計、血圧計、体温測定などを監視しながら注意深く全身を管理します。心臓外科の手術ではさらに、動脈(脈拍が触れる血管)に管を入れて血圧測定や採血ができるようにする処置(動脈カニュレーション)、首や胸、足の付け根などの静脈から心臓の近くまで管を入れる処置(中心静脈カニュレーション)、超音波探触子(プローブ)を胃カメラのように食道に挿入して心臓の動きを調べる検査(経食道心エコー検査)、脳に酸素が行き渡っていることを確認する検査(近赤外線酸素飽和度測定)などの高度な生体情報監視装置を使って精密な管理をします。

手術後の痛みに対しては、お尻に入れる座薬や飲み薬、前述の硬膜外鎮痛、点滴から持続的に鎮痛薬を投与する方法(持続静脈注射)などがあり、手術の内容(術式)や部位、痛みの程度に応じて使い分けます。特殊な機械や器具を使って、痛みが出たときに患者さんが自分でボタンを押すことで痛み止めの薬を追加できる方法(自己調節鎮痛、PCA: patient control analgesia)を行うこともあります。術後の痛みの治療に使う鎮痛薬には、悪心や嘔吐、痒み、便秘、お腹が張るなどの副作用の可能性があるため、制吐薬(吐き気止め)や痒み止め、緩下剤(便秘薬)などを必要に応じて使います。

当院は、日本麻酔科学会により認定された認定病院で、2人の麻酔科指導医、6人の麻酔科専門医を含む10 人の麻酔科医で診療にあたっています。年間の麻酔症例はおよそ2,600 例で、そのうち6歳未満の患者さんはおよそ1,500 例、新生児・乳児が500 例と、小さなお子さんの麻酔経験が豊富です。また、当院は日本心臓血管麻酔学会により認定された心臓血管麻酔専門医認定基幹施設で、心臓血管麻酔専門医も所属しています。先天性心疾患の手術麻酔は年間500 例程度行っており、術中診断に欠かせない小児の経食道心エコー検査も年間300 例以上と、国内でも屈指の実施件数です。

主な対象疾患

初期対応については、疾患を限定しません。

安全な麻酔のために

  1. 絶飲食の指示を守りましょう。

    胃に食べものが入っていると、全身麻酔で意識がなくなったときに、胃の中のものを吐くことがあります。窒息や肺炎を起こすことがあるので大変危険です。

  2. 最近の体調はいかがですか?

    風邪をひいていると、息の通り道(気道)が突然つまって息ができなくなることがあります。
    手術の後で症状が悪化して肺炎になることもあります。風邪薬で症状が軽くなることがありますが、一時的に症状を抑えるだけです。鼻や喉、気管、肺などの呼吸器の炎症が良くなるわけではありません。

  3. いびきをかいたり、睡眠中に息が止まることはありませんか?

    手術の前に処方する眠り薬で、普段よりも息がしにくくなることがあります。いびきや睡眠中に息が止まる症状があったり、鼻づまりが強い場合は、担当麻酔科医にお知らせください。

  4. ご家族やお友達などで、最近、風疹、みずぼうそう(水痘)、はしか、嘔吐下痢症などに罹った人はいませんか?

    病気がうつっている可能性があります。入院中に他の患者さんに病気をうつすこともあります。入院前または入院時の診察で、医師か看護師にお知らせください。

  5. 一ヶ月以内に予防接種をうけていませんか?

    手術や麻酔の影響で抵抗力がおちて、予防するはずの病気にかかってしまう可能性があります。BCGや麻疹・風疹などの生ワクチンは接種後3週間以上経っていることが原則です。なお、緊急に手術が必要な場合はこの限りではありません。

  6. 喘息はありませんか?

    手術中に発作を起こすことがあります。普段から使用している薬があれば持参してください。

  7. アレルギーはありませんか?

    食物、ゴム製品や薬でじんましんが出たことはありませんか? 手術中に使用する麻酔薬や抗生物質などに対してアレルギー反応が強く出て血圧が下がり、緊急に処置が必要になることがあります。

  8. グラグラと動く歯はありませんか?

    麻酔や手術で口の中を扱うときに歯が抜けてしまうことがあります。

  9. 口を大きく開けられなかったり、首を動かしにくくはありませんか?

    人工呼吸のための管を気管にいれることが難しい可能性があり、特別な処置が必要になることがあります。

  10. 普段から飲んでいる薬はありませんか?

    薬によっては麻酔に影響するものがあります。かかりつけ医に薬の名前を確かめてきてください。 入院時にアンケート用紙をお渡しします。わかる範囲で構いませんので、できるだけ詳しくご記入ください。小さなお子さまへは、ご家族からも手術や麻酔について簡単にお話していただけると助かります。

術前の診察と説明

予定手術では、原則として手術日の前日(手術日が月曜日の場合は金曜日)に担当医が病室に伺って診察と診療内容のご説明をします。わからないことなどがありましたら、遠慮なく担当麻酔科医にお尋ねください。手術の合間を縫って回診するため診察時刻のお約束が難しく、お待たせすることがあるかもしれませんが、ご協力いただきますようお願いいたします。

麻酔科イメージ
診療実績

診療実績

2023年4月~2024年3月

麻酔管理症例 2,714件(全身麻酔2,550件、区域麻酔164件)
麻酔管理症例の年齢構成 新生児95件、乳児335件、1歳以上6歳未満1,076件
緊急手術 293件(心臓血管外科54件、産科92件、整形外科52件、小児外科60件など)
医師紹介
現在、新体制への移行に伴い、医師紹介ページの内容を順次更新しております。
ご不便をおかけしますが、何卒ご了承ください。
FAQ

FAQ

赤ちゃんにも麻酔はできますか?

麻酔は手術や検査などの際に恐怖や痛みをとるために行いますが、麻酔をすることで呼吸や心臓の働きが一時的に弱くなるため、それらを補う必要があります。

呼吸を助けるために気管にチューブを入れて人工呼吸を行ったり、心臓の働きを助けるために点滴から水分やお薬を入れたりしますが、赤ちゃんではそれらの処置が大人より少し難しいといえます。細い血管にカテーテル(細い管)を入れる際には超音波(エコー)装置で血管を確認するなど、最新の機器を用いて安全で確実な処置を行うよう努めています(写真1)。

私たちは、こどもの麻酔に習熟した麻酔科医と手術室看護師で協力しながら、体重500グラムの小さなお子さんにも麻酔を行っています。

赤ちゃんへの麻酔イメージ

写真1 赤ちゃんの細い血管への注射も、エコーで確認しながら安全に行います。

子供への麻酔が発達に影響しないか心配です

ラットやマウスなどの赤ちゃん対する実験では、麻酔薬が脳や発達に悪影響を与えるという研究結果がありますが、人間では証明されていません。
一方、赤ちゃんの頃に短時間の麻酔を経験した子供たちの発達を数年間追跡した研究では、麻酔薬の影響は認められなかったという結果が得られています。急ぐ必要がない手術であれば、お子さんが少し大きくなるまで手術の時期をずらすことも選択肢となりますので主治医の先生とよく相談してください。

手術中は麻酔科医が絶え間なくお子さんの状態を観察し、呼吸や血圧など体の状態をより良く保つことで麻酔の悪影響を減らす努力をしています。

手術中に目が覚めたりしませんか?

手術中に目が覚めることを「術中覚醒」といいます。手術中の出血が多くて血圧が保てないなど特殊な状態の時には、十分に麻酔薬を使うことが出来ず術中覚醒が起こることがありますが、手術中に十分量の麻酔薬が使われていれば術中覚醒は殆ど起こりません。術中覚醒を恐れるあまり大量の麻酔薬を使うと、低血圧など手術中の副作用も増えますし、手術後にお子さんに生じる影響も心配です。

最近、大人において適切な麻酔薬の量を決める手がかりとして脳波の変化が役立つのではないかという研究がなされていて、子供でも脳波を観察しながら麻酔の量を調節する試みが始まっています。私たちの病院でも最新の脳波計(写真2)を使いながら患者さんに安全で快適な麻酔が提供できるように努めています。

最新の脳波計イメージ1

写真2-a 解析された脳波の画面

最新の脳波計イメージ2

写真2-b おでこに脳波のシールを貼ったところ

手術後の痛みが怖いのです

痛みは手術のときに最も嫌な体験の一つです。痛みがあると精神的につらいだけでなく、血圧や脈拍が不安定になったり、胃腸の働きが悪くなったりという悪影響があることが知られています。最近、手術後の患者さんの合併症を減らして早期に回復させるためにERAS(Enhanced Recovery After Surgery; 術後回復の強化)という取り組みが世界的に行われていますが、その中でも痛みを最小限に抑えることが強く提唱されていて、私たちの病院でも取り組んでいます。

飲み薬や点滴で使う痛み止めにはアセトアミノフェン、消炎鎮痛剤、オピオイド鎮痛剤などがあります。お腹や足の手術では脊髄の近くに細いチューブを入れて局所麻酔薬を入れる方法(硬膜外麻酔法)を行います。使用するお薬や投与する方法によって効果の強さや副作用が異なるので、手術の種類や患者さんの状態によって何種類かの方法を組み合わせて痛み止めを行います。

腹部手術や脊椎手術など痛みが強い手術では、手術後数日間は点滴からオピオイド鎮痛剤を入れますが、当院では特殊なポンプ(写真3)を使って、患者さんが痛いときにボタンを押すことで必要なお薬の量を調整するPCA(patient controlled analgesia; 患者自己調節鎮痛法)という方法も行っています。麻酔科医が定期的に病棟回診を行い、主治医の先生や病棟スタッフとも協力しながら、痛み止めの調節や副作用対策なども積極的に行って効果を上げています。

赤ちゃんへの麻酔イメージ

写真3 患者自己調整鎮痛に使用するポンプ。ボタンを押すと、痛み止めが早送りされます。

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