福岡市立こども病院

心臓血管外科

当科について

診療内容

当科では,外科的修復術が可能な先天性心臓病に対するすべての手術を行っています。それぞれの心臓病で手術方法、手術時期が異なり、一度の手術で完全に治せるものから複数回の段階的手術を経て最終ゴールへ到達できるものまで様々です。先天性心臓病の中には、出生直後に緊急で手術を行わなければ救命できないものや、急速に状態が悪化し早急に手術をしないといけないものがあり、当科では毎日の予定手術のほかに、このような急患手術も随時受け入れられる態勢を取っています。

また、近年の先天性心臓病の胎児診断の普及に伴い、重症心臓病の症例は母体管理から計画分娩、出生後の緊急手術に対応できる体制も整えています。手術フロアーではバイオクリーン手術室を2室有しており、そのうちの1つは外科的治療とカテーテル的治療の同時施行が可能なハイブリッド設備を有しているので、リスクの高い新生児複雑心奇形の救命的姑息手術や血管狭窄病変に対する治療、また将来的には肺動脈弁閉鎖不全症に対するカテーテル的弁置換術などに対応可能です。小児循環器科や新生児科、また産科、麻酔科とのチームワークのもと、周術期管理を含めより安全でより侵襲の少ない高度の外科的治療を行っています。

科の特徴・特色

当科では、特に新生児期や乳児期の手術が占める割合が多いのが特徴です。また、複雑心奇形に対する根治手術が多く、左心低形成症候群に対するノーウッド手術や機能的単心室症に対するグレン手術、フォンタン手術の手術症例数は全国有数です。

1980年の病院開設以来の当科における心臓血管手術の総数は13,000例を超えるまで手術症例数が増加しています。これは小児心臓血管外科としては全国トップクラスです。また、当院は先天性心臓病治療の基幹施設であり、九州圏内のみならず全国から患者さんの紹介やセカンドオピニオンの依頼、また手術の依頼が多いのも特徴の一つです。

主な対象疾患

当科では、全ての先天性心臓病の外科治療を行っています。完全大血管転位症や大動脈縮窄および大動脈離断症、また総肺静脈還流異常症や左心低形成症候群など新生児期に手術を必要とする疾患から、ファロー四徴症、心室中隔欠損症、房室中隔欠損症など乳児期に手術を行うことが多い疾患、また心房中隔欠損症など年長児まで待てるものなど様々なものがあり、それぞれの患者さんの病態に応じた適切な手術を適切な時期に行っています。

診療科より

当科では、より安全で確実な心臓血管手術をめざして様々な工夫と取り組みを行っています。新生児期、乳児期早期の大動脈弓の形成が必要な開心術では従来行われていた循環停止法を完全に回避する新しい体外循環法(Total body perfusion法)を独自に開発して臨床応用しています。また、体外循環中は血液中に有害物質を除去する限外濾過法(ultrafiltration法)を併用するなど、より低侵襲で安全な手術を行っています。当科では、心臓病をお持ちのこども達の病態に応じた適切で確実な外科治療をこころがけ、心臓病を持ったこども達とそのご家族が少しでも最適な生活を送れるように豊富な経験と最新の技術で日々の診療を行っています。

外来診察

毎週木曜日の午後から心臓血管外科手術を受けられる方を対象とした専門予約外来を行っております。手術方法、手術内容をわかりやすく専門医が説明しておりますので不明な点があればご遠慮なくお聞きください。

診療実績

診療実績

開院以来の年間手術症例数の推移をグラフで示します(図1)。近年、当科での年間手術症例数は350例を超えており、そのうちの多くが人工心肺装置を使用した開心術です。最近4年間の手術症例の年齢分布(図2)では新生児期手術が285例(18%)、乳児期手術が606例(38.2%)で、これらを合わせた1歳未満の症例が56.2%と全体の半数以上を占めます。

年間手術症例数グラフ
(図1)
手術症例年齢分布
(図2)
医師紹介
現在、新体制への移行に伴い、医師紹介ページの内容を順次更新しております。
ご不便をおかけしますが、何卒ご了承ください。
  
先天性心臓病テキスト

正常心

心臓はいわゆるポンプの役割をはたしています。 全身に酸素を供給し終えた静脈血は上大静脈と下大静脈を通って右房に還流してきます。
この血液は三尖弁を経て右室に入り肺動脈に駆出され、肺で酸素化された後に左房に還流します。
この酸素化された血液は僧帽弁を経て左室に入り大動脈に駆出されます。
左右の心房、心室の間には隔壁として心房中隔と心室中隔があります。

正常心イメージ

心房中隔欠損症(ASD)

心房中隔欠損症は心房中隔が一部欠損するために、左房の血液が右房右室肺循環に短絡する疾患です。
通常は無症状で、学校検診で心電図異常を指摘されてはじめてわかる場合も少なくありません。
加齢とともに、右心系の拡大に伴う不整脈や心不全が出現してきます。
肺高血圧症を合併することはまれです。
カテーテル法を用いて特殊な器具で欠損部を内科的に閉鎖する技術も開発されていますが、当院では人工心肺装置を用いた外科的閉鎖手術を行っています。
特に最近ではMICS(低侵襲心臓手術)が行われており、輸血を行わず、小さく目立たない手術創(6~7cm以下)で手術することが可能になっています。

正常心イメージ

心室中隔欠損症(VSD)

心室中隔欠損症は先天性心疾患の中でも最も頻度の高いものの1つです。
左室と右室を間にある心室中隔が一部欠損し、左室の血液が右室と肺動脈に短絡するために、呼吸不全や心不全をきたす疾患です。
生後間もない時期に強い心不全や肺高血圧症を呈する重症例では手術を急ぎます。何も処置することなく閉鎖するいわゆる自然閉鎖もあります。
欠損口が小さければほとんど症状がない場合も少なくありませんが、大きな心雑音がすること、感染性心内膜炎の危険があることから、最近では積極的に手術で閉鎖する場合が多くなっています。
また欠損部の位置によっては(動脈弁下型)、大動脈弁の変形をきたすことがあり、手術を急ぐこともあります。

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動脈管開存症(PDA)

動脈管は母親の胎内にいるときは誰にでもある大動脈と肺動脈を結ぶ管ですが、通常は出生とともに閉じるものです。 何らかの原因によりこの管が開いたままになったのが動脈管開存症です。
動脈管を介して大動脈から肺動脈に血液が短絡し、心不全、肺高血圧症の原因となります。
動脈管が大きければ乳幼児期に緊急手術を行うこともあります。 小さければ症状が出ることはほとんどありませんが、感染性心内膜炎や動脈管が動脈瘤化する危険があります。
カテーテル法を用いて動脈管にコイルを詰める技術も開発されていますが、当院では動脈管を切り離す外科手術を基本方針としています。

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ファロー四徴症(TOF)

ファロー四徴症は心室中隔欠損症、肺動脈狭窄、大動脈右室騎乗、右室肥大を四徴とする疾患です。
左右心室間で動脈血と静脈血が混合するためチアノーゼ(低酸素血症)を呈します。強い肺動脈狭窄のため肺で酸素化される血液が極端に減少すると無酸素発作を起し生命に危険が及ぶ場合もあります。
生後間もない症例や肺動脈の発育が悪い症例では、チアノーゼの程度を軽くし、無酸素発作を予防するためブレロック-タウジッヒ手術を行うこともあります。
ブレロック-タウジッヒ手術は鎖骨下動脈と肺動脈の間にバイパス人工血管を縫い付け、肺血流を増加させる手術です(完全に治す手術ではありません。姑息手術といわれます)。
根治手術では心室中隔欠損閉鎖、肺動脈狭窄解除を行います。
最近では根治術時年齢が低下しており、ブレロック-タウジッヒ手術の代りに乳幼児期に根治手術を行うことが多くなっています。

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両大血管右室起始症(DORV)

両大血管右室起始症は大動脈弁、肺動脈弁のほとんどが右室から起始する疾患です。
左右心室間の短絡のため肺血流が増加し心不全と肺高血圧症を呈する場合と、肺動脈狭窄を合併しチアノーゼを呈する場合の2つに大別されます。 さらに心室中隔欠損の位置によって

  • ・大動脈弁下型
  • ・肺動脈弁下型
  • ・両大血管下型
  • ・遠位型

の4タイプに分類されます。
通常、乳児期には、肺血流が多い場合は肺動脈バンディング手術を行い、少ない場合はブレロック-タウジッヒ手術を行います。
根治手術の方法は病型により異なり、

  • 左室血液を大動脈に導くように右室内にトンネルを作成する手術(心室内修復術)
  • 完全大血管転位のジャテネ手術に準じた手術
  • 右室肺動脈間に人工血管をつなぐラステリ手術

などがあります。

正常心イメージ

完全大血管転位症(TGA)

正常では大動脈は左心室から、肺動脈は右心室から起始しますが、 完全大血管転位症では大動脈と肺動脈が転位し、大動脈が右心室から、肺動脈が左心室から起始します。
動脈管開存や心房中隔欠損症、心室中隔欠損症の存在が生存の条件になります。

  • 心室中隔欠損がないものを1型
  • 心室中隔欠損があるものを2型、
  • 心室中隔欠損と肺動脈狭窄があるものを3型

と分類します。
1型では、生まれてまもなく動脈管開存が閉じるため強いチアノーゼが見られることが多く、動脈管を開かせるプロスタグランディン製剤が必要になります。同時にカテーテル法を用いてバルーンにより心房中隔欠損を作る治療(BAS)が行われます。 これらの内科的治療を行った後、ほとんどの症例で生後1~2週の新生児期に根治手術であるジャテネ手術を行います。
2型では心室中隔欠損症があるためプロステグランディン製剤投与やBASは必要ないことが多いです。心不全やチアノーゼが強い場合には生後2~4週でジャテネ手術を行います。症例によっては肺血流を減らすため肺動脈バンディング手術をすることもあります。
3型では乳児期にブレロック-タウジッヒ手術を行い、1歳以降に人工血管を用いたラステリ手術や自己組織を用いたREV手術が行われます

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総肺静脈還流異常症(TAPVD)

総肺静脈還流異常症は、本来左房に還流すべき肺静脈が体静脈路に還流する疾患です。
心房中隔欠損や動脈管開存が体静脈血と肺静脈血が混合する経路として必要です。
通常、チアノーゼ、高肺血流と肺うっ血に伴う心不全、呼吸不全を呈し、出生直後から重篤な病態となります。
肺静脈が還流する場所によって、

  • 上心臓型(上大静脈に還流)
  • 心臓型(右房、冠状静脈洞に還流)
  • 下心臓型(門脈、下大静脈に還流)

の3つの病型に分類されます。
手術は左右の肺静脈が集まる共通肺静脈と左房を吻合します。 心臓還流型を除き、ほとんどが新生児期に緊急手術の対象になります。 肺静脈還流部に狭窄がある症例は手術の危険性が高くなります。

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左心低形成症候群(HLHS)

左心低形成症候群は左心室と大動脈が低形成となる症候群であり、 通常、大動脈弁閉鎖、僧帽弁閉鎖あるいは狭窄が認められます。
動脈管および心房中隔欠損の存在が生存のための必要条件となります。 生後まもなく動脈管の閉鎖が起こると、急激に全身状態が悪化し死亡することが多い最も重篤な病気の1つです。 動脈管を開くためにプロスタグランディンを使用し、唯一の救命手段である外科治療に備えることが重要です。
通常、新生児期にノーウッド手術が行われます。 ノーウッド手術は、基本的には、細い大動脈の代わりに肺動脈を新しい大動脈として形成し、大きな心房中隔欠損を作り、新しい肺血流路を作る手術です。 手術前の状態が特に悪い場合には、危険性が高いノーウッド手術を避け、両側肺動脈バンディングを行うこともあります。
この病気のゴールはフォンタン型手術ですが、現在では

  • 第一期手術にノーウッド手術
  • 第二期手術として両方向性グレン手術
  • 第三期にフォンタン手術

と、三段階に分けた手術が一般的です。
通常、ノーウッド術後4~6ヶ月で両方向性グレン手術を行い、1~2歳で最終目標であるフォンタン型手術を行います。 当病院では現在までに(2006年6月)、35名の左心低形成症候群の子供たちがフォンタン手術に到達しています。

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心内膜床欠損症(ECD, AVSD, CAVC)

心内膜床欠損症は心室中隔欠損、心房中隔欠損、心臓房室弁の形成異常を伴う疾患です。
心室中隔欠損を伴う完全型と伴わない不完全型に分類されます。
完全型では肺高血圧症と心不全がみられ、乳児期に根治手術が行われます。 *症例によっては肺動脈バンディング手術を行うこともあります。
不完全型では、弁逆流がなければ心房中隔欠損症に似た経過をとります。不完全型の房室弁は左右2つに分かれていますが、それぞれに亀裂(cleft)があり弁逆流の原因となります。 完全型では1つの房室弁が左右の心室にまたがっています。
手術は房室弁を左右の2つに分けて逆流が残らないように形成し、心房中隔欠損症と心室中隔欠損症をそれぞれパッチで閉じます。

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単心室症とフォンタン型手術

単心室症は左室、右室どちらかの心室が低形成で、体循環と肺循環を2つの心室が分担するように修復する根治手術ができない疾患です。
無脾症候群や多脾症候群の多くが単心室の形態をとります。最終目的はフォンタン手術です。
チアノーゼを呈する肺動脈狭窄を合併するものと、高肺血流のために心不全、肺高血圧症を呈するグループに大別されます。 いずれのグループも一度でフォンタン手術に到達することはまれで、準備手術が必要です。ブレロック-タウジッヒ手術や肺動脈バンディング手術が最も行われることが多い準備手術です。 最近ではこれらの準備手術とフォンタン手術の間に、上大静脈の血液のみを肺に環流させる両方向性グレン手術を行ったほうがフォンタン手術の成績が良いといわれることが多く、いわゆる段階的フォンタン手術が一般的になりつつあります。
フォンタン手術には心房と肺動脈を直接吻合して右心房と左心房の間を仕切る術式(APC法)と、上大静脈を切断して右肺動脈に吻合し、下大静脈の血液を心房の中のトンネルを通して肺動脈に導く術式(TCPC法)があります。最近ではTCPC法として心房内トンネル法にかわり、心臓の外に置いた人工血管を用いる術式(心外導管法)が多くなっています。
人工血管の材質としてはPTFE(ゴアテックス)が用いられます。心外導管法の利点としては手術が短時間に終わること、術後心機能が良いこと、不整脈の発生が少ないことなどがあげられます。 最近、フォンタン手術後の患者さんでは、血液が固まりやすい状態にあることが解ってきており、手術後に抗凝固療法を行われることが多くなっています。

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大動脈縮窄・離断症

大動脈縮窄は大動脈弓の一部に狭窄がある疾患です。 大動脈離断症は大動脈弓の一部が欠損し離断する疾患です。いずれも他に心臓病のない単純型と心室中隔欠損症などの心内奇形を伴う複合型に分類できます。
単純型では乳児期以降に発見されることも少なくありません。 複合型は動脈管開存を伴い新生児、乳児早期に発症します。
新生児では、動脈管を開いて下半身血流を維持するためにプロスタグランディンを使用しますが、外科的に大動脈再建をする必要があります。
再建方法としては鎖骨下動脈を用いて大動脈の狭い部分を広げる方法(フラップ法)と直接吻合する方法(EAAA法)があります。
治療方針としては、先に大動脈再建のみ行う段階的手術と大動脈再建と心内奇形を同時に修復する一期的根治術があります。 最近では一期的根治術を行う施設が増えています。

正常心イメージ
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